働くひととホワイト企業を応援!志ンガー社労士の竹内隆志が音楽と講話で労働法を解説します

ホワイトな志ンガーズの世話人社会保険労務士竹内隆志が歌と講話で楽しく労働法について連載しています。

ダンダリンでわかる労働法(10)社労士の品位と労働基準監督官の職務

ダンダリンもいよいよ次回(第11回)で最終回らしい。残念だ。

ここにきて、あの冷徹そうな段田凛が、一人の女性として苦悩するか弱い姿がやっと出てきたように思う。これまでは、ダメなものはダメ、ルールを守ることを会社に要請し毅然たる労働基準監督官として職責をまっとうしている姿があったせいか、やや強面の女性はやはり敬遠されるのか、このドラマの視聴率は予想に反して低迷しているようだ。

ところが、ここにきて竹内結子演ずる主人公の段田凛。南三条が罠にはめられた原因が自分にあることで、本来の監督官の職責を全うするのか、一人の女性として大切な人を守ることを優先するのか、悩み苦しむ姿が浮き彫りにされ、やっとテレビドラマ風になってきたといえる。これまでは「ダンダリン」の中で出てきた労働法のことを主に解説してきたのだが、今回は少し視点を変えて、社労士と労働基準監督官の職責ってなんだろうということを考察してみたい。

 

ダンダリンの中で、相葉社労士事務所で働く元労働基準監督官の胡桃沢社労士の法の抜け穴を使い、いわゆる悪知恵を企業に指南している姿に前から大いに疑問を感じている。

現役の社労士として言わせてもらうと、世間一般の方にこれが社労士かと思われてしまうのは大いに困る。

最近では合格率が5.4%という難関の資格。実際には誠実に真面目にきちんとダメなものはダメと企業の経営者等に助言している職業意識の高い社労士がほとんどであろう。

その社会保険労務士の職責としては、社会保険労務士法第一条の二に、「社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。」と規定されている。

ドラマの中で胡桃沢という若手社労士が段田凛に向って「あなたに死んで欲しい。」何度も「死んで欲しい。」と恐喝するような場面があったが、これなどは社労士の倫理基準等に照らしても大いに問題発言ではないかと思う。

通常であれば当事者から社労士会に苦情申し立てがあってもしかるべきかもしれない。

また胡桃沢社労士がアップルワークスの件で話があると偽って段田凛を深夜カフェに呼び出したり、かつての同僚、南三条が関与先の企業の調査をしていることを喋ったり、仕組まれた罠にかかって困っていることなどを知っていて、それ段田凛に漏らすことなどは、社労士法第二十七条の二の「守秘義務」にも抵触しているともいえる。

いずれにせよ、社会保険労務士には倫理規定があり5年間に一度倫理研修の受講が義務付けられており、会としても非常に重きを置いているのだ。

労働基準監督官の職責といえば、段田凛がドラマでも職務を頑なに忠実に行っているように、日本の労働関係法令に基づいて、あらゆる種類の事業場に立ち入り、労働基準法労働安全衛生法等を遵守させるとともに、労働条件の向上を図っていくことをその任務としている。

ILO81号条約の労働監督の第12条では、その労働基準監督官の権限が書かれている。つまり、立ち入り検査、調査、検査又は尋問、物品の収去などだ。ILO国際労働機関は、労働条件の改善を通じて、社会正義を基礎とする世界の恒久平和の確立に寄与すること、完全雇用、労使協調、社会保障等の推進を目的とする国際機関であり、その条約により労働基準監督官の権限が基づいているのだ。

先ごろ、監督官の人数が抑制されているということを聞いて、ある社労士が自分達国家資格者の活用を図れとある新聞に投稿記事があったようだが、これに元労働基準監督官の方が反論した投稿記事を載せておられたのを拝見した。

当然のことだと思う。監督官の成り立ちと社労士制度が出来た経緯はそれぞれ違いがあり、たんに労働法令に精通しているだけではないのだから。

第十話を視聴してそんなことを感じた。社労士と労働基準監督官。立場は違うが、働く人を守り、職場環境を改善すると言う意味では、それぞれの果たす役割は大きいと思う。

 

ダンダリンでわかる労働法(8)(9)は業務多忙のため執筆できていません。m(..)mまた時機をみて書きたいと思います。

 

ダンダリンでわかる労働法(6)外国人技能実習生制度と最低賃金

今回は外国人技能実習生が最低賃金額の半分にも満たない低賃金で働かされ、残業代も支払われず、外出もままならないほど不当に拘束されていた内容でした。あまりにも酷いタコ部屋のような労働環境の事例でしょうか。今日ではありえないと思えるような設定でしたが。(^^)

 

外国人技能実習生制度とは、開発途上国等の青年・壮年を一定期間受け入れ、わが国で開発され培われた産業上の技能・技術・知識の習得をしてもらい、母国の経済・産業振興を担う「人づくり」を目的としたものです。この制度は日本の国際協力・国際貢献において重要な役割を担っています。

各国の経済発展を担う「人づくり」に一層貢献するとことを目的とした制度への拡充の観点から日本政府は1993年、所定の要件を満たした研修生に雇用関係の下でより実践的な技術等を習熟させる技能実習制度を創設しました。

これまでこの制度は日本の社会に定着し、研修生としての新規入国者数が10万人を超え、研修から技能実習への移行者数も6万人を超えるようになったのですが、このドラマに出てきたように、本来の制度の趣旨を十分に理解せずに、外国人の方を単に低賃金労働者として不適正な取り扱いをする受け入れ団体・受け入れ企業がみられるようになったことも事実です。

ドラマの中で出てきたように、技能実習生などに劣悪な労働環境を強いて休日労働や時間外労働をさせてその休日労働や時間外労働の賃金を支払わないといった事例などですね。

このため2009年7月に「入管法」の改正が行われ、これまでの研修・技能実習生制度を廃止して、新たな技能実習制度を創設し、講習終了後すぐに労働関係法令を適用できるようにして、技能実習生の保護を図るようになりました。この新制度は2010年7月から施行されています。

具体的に言うとこれまで入管法では「研修」と「特定活動(技能実習)」を含めた在留資格として新たに「技能実習」を創設し、技能実習生の法的地位の安定をはかるとともに、雇用契約に基づく技能等の修得活動などを義務付け、入国1年目から技能実習生労働基準法最低賃金法等が適用され保護の充実が図られるようになりました。

 

入管法の改正に伴い、2010年7月1日以降に技能実習生を受け入れる監理団体は、講習期間中に専門的知識を有する外部講師による「技能実習生の法的保護に必要な情報」に係る講義を行うことが義務づけられました。

私もJITCOの登録講師として時々技能実習生を受け入れる管理団体から依頼されて、入管法令及び労働関係法令の講義を外国人技能実習生の方々に行っています。

その中で実習生の関心の高い項目としては賃金なかでも最低賃金に関しての情報に深い関心を持たれていることを実感します。日本に来ていろんなトラブルにあったときの相談先や相談機関などの情報にも実習生の皆さんは強い関心を持って聞かれています。

 

今回のドラマで平成25年10月現在東京都の最低賃金869円の半分にも満たない400円で働かされていた事実が発覚するのですが、それでも母国の経済水準と比較しても10倍ほど高いマネーが日本で働くことで得られるため、お金を貯めて母国で暮らす家族の元へ送るため必死で働いていた外国人の方の姿が描かれていました。

私も先日中国人の女性の技能実習生に講義をさせていただきましたが、母国に子供を残してまで彼女らは日本で働きに来られているのをみると、我々日本人は恵まれていることを感じたりもします。でも実習生の皆さんは明るい笑顔で熱心に日本語などを習得しようとする姿をみるとこちらも逆に元気づけられますね。

 

最低賃金は、毎年改定されており、地域別最低賃金と一定の事業や職業に従事する期間労働者及びス容赦に適用され特定(産業別)最低賃金を除いては各都道府県毎に10月下旬ころに新しい最低賃金額の告示がなされています。障害者等の方でこの最低賃金額から一定率減額した額をもって適用すされる減額の特例が認められることがあります。この場合は管轄の労働基準監督署長に最低賃金の減額の特例許可申請書を提出し、許可を受ける必要があります。

 

実務で多い事例としては、最低賃金額と比較するときに対象賃金の計算方法があります。月給制の場合の換算方法として、月給額の12か月分をまず出します。

次に年間所定労働日数をきちんと集計します。所定労働日数とは年間の暦の日数から会社の所定休日などを除いた日数のことです。

その年間所定労働日数に1日当たりの労働時間数、例えば1日8時間とすれば、年間所定労働日数に8時間をかけたものが「年間総所定労働時間数」になります。

先の「月給額の12か月分」を「年間総所定労働時間数」で割ったものが換算した時間額となります。これを各都道府県で告示されている最低賃金額(時間額)と比較して超えていればOKとなります。

 

この対象となる月給額には、臨時に支払われる賃金(結婚手当)や賞与あるいは時間外割増賃金、休日労働の割増賃金、深夜労働の割増賃金、そして精皆勤手当、通勤手当及び家族手当などの賃金は除かれますのでご注意ください。実務では間違って参入して計算しているケースは結構あります。

最低賃金に違反し、労働者が是正のための申告をしたことにより不利益な扱いをした場合には、もちろん懲役や罰金などの処罰の対象となります。

最低賃金違反の疑いがあるときなどには労働基準監督官が臨検を行える権限があります。

 

ダンダリンでわかる労働法(5) 退職の自由と退職願、退職届

ドラマの冒頭、ある会社に指導監督に訪れた、南三条と段田凛。

女子社員の制服のスカート丈が短いということで、長さのチェックを始めるが、これは何に違反しているのか?がよくわかりません。(笑い)段田凛が言うように、女子社員のスカート丈が短いと男性社員が劣情をもよおして職場の仕事の能率や労働環境が著しく低下する?ということでしょうか?(笑い)

そもそも、アルバイトの方の休憩時間が守られていない?ということで指導に訪れたのがきっかけでした。

休憩時間はパート・アルバイトを問わず全ての労働者に適用されますね。法律的には6時間を超えると休憩時間を与えなければならず、最低でも45分間、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えなければなりません。途中とは終業時刻の1時間でもいいのですが、就業時間後に設定することはできません。一般的には労働時間8時間とすれば、お昼の休憩に30分、10時に15分、15時に15分といった定め方でもOKですし、お昼にだけまとめて45分以上であれば法律的にはOKです。

1時間を与えるケースは多いと思いますが、8時間の労働時間を超える場合にということですので、ジャスト8時間であれば最低45分でよいことになります。終業時刻を超えて残業する場合などによくいったん休憩を30分程度取って(お昼に休憩を取っているとして)それから残業するケースはあるようですが、8時間を超えても途中で1時間以上の休憩を取っていれば引き続いて労働してもよいことにはなります。ただ労働者の健康管理や安全管理面でいえば、適宜に休憩をとって置くのは望ましいとは思います。 

さて第5話の争点は「退職の自由と退職願と退職届の違い」です。

人気パティシェの男性が事業主から使用する食材を落とすレシピを強要されて、そのこだわりから辞めさせてほしいと訴えるが、なかなか辞めさせてくれないという相談にこられました。

労働基準法には使用者が労働者を解雇する、つまり使用者側からの労働契約の打ち切りは労基法第20条に規定があるのですが、労働者側からの労働契約の打ち切りは規定がありません。というのも、そもそも労働基準法は労働者が守られる権利について使用者に遵守義務を定めたものが多いため、こうした契約のことについてはそもそも民法に定められています。

民法第627条の規定は、期間の定めのない雇用の解約の申し入れについて定められています。期間の定めがないとは、正社員かあるいは無期のパート、アルバイトの方の雇用契約になります。期間の定めがあるとは、有期の雇用契約、つまり有期契約社員などの方の雇用契約になります。

労働契約はそもそも当事者の双方が合意により契約を結んだものですが、その一方の当事者からいつでも解約の申し入れをすることができます。ただし使用者側には民法の特別法たる労基法で使用者から解約する場合(解雇)には30日前に予告するか、あるいは30日以上の平均賃金を支払うことを義務づけています。

それ以前に労働契約法第16条において、解雇が合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。

労働基準監督官の権限が及ぶのは、労基法の規定に違反している場合であって、労働契約法に違反すると思われても,それを直接的に指導することはできません。

一方労働者側からの労働契約の解約の申し入れの場合の有効となる契約終了日ですが、給与の定め方によって異なります。月給制による場合は、月の前半に申し出た場合はその月の末日、月の後半に申し入れた場合は翌月の末日となります。時間給、日給制の場合は期間による報酬の定め方でないので、解約の申し入れの日から2週間を経過すると終了できます。

よく就業規則には労働者側の義務として自己退職などで辞める場合には1ヶ月前に申し出るよう定められていますが、先の民法の規定からいくと月給制の方で就業規則の定め方が違反となるケースが出てきます。

無用なトラブルを避ける点から上記の内容を補足する規定を入れておくことよいでしょう。顧問の社労士にこのことを相談してもわからないような社労士であれば、ちと要注意!です。(笑い)

 

会社に連絡もないまま行方不明のまま会社に出社しない社員との労働契約を打ち切りたいケースが出てきますが、解雇として処理していくとどうにもできないことになります、何故なら申し入れの意思表示が相手に届かないから無効となるので要注意です。

こうしたリスクを避けるには、あらかじめこの事態も想定して上記の申し入れの場合の有効となる契約終了日までの期間を見越して50日程度経過すれば自動的に契約が消滅するという規定のしかたをしておくとよいでしょう。

労働相談にあたっていると、労働者の方で辞めたいと思って手続きをとられている場合でも「退職願」で辞表を書くケースを良く目にします。これでは使用者側に承諾を求める「合意解約の申し入れ」ととられることになり、使用者側が認めたくない場合はいつまでたっても埒があきません。「退職届」にすると労働者側からの労働契約の解約の申し入れの意思表示となりますので、一定の期間が経過すれば使用者が認めなくても退職できる(契約終了)ことになります。

民法第628条では、有期雇用契約を定めた場合であって、やむを得ない事由以外の当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負うとされます。また労基法第137条では1年を超える場合には有期的事業に関するものを除き、1年を経過すればやむを得ない事由がなくてもいつでも辞職できることになります。 

ドラマでは店の中心的なパティシェの男性は正社員であったと思われますので、これらの適用を受けないため民法第709条の不法行為による損害賠償によることを使用者側が持ち出したのかと思われますが、それにあたる事実関係もなければ、訴えを起こしてもたんに嫌がらせでにすぎないでしょうが、裁判となるとやはり普通の人にはトラブルをなるだけ避けようとする抑止効果になるようですね。

使用者側に入れ知恵をした社労士のねらいもそこにあったようですが・・・。

 

最終的には相葉社労士事務所の女性社労士の所長がwinwinでまとめられたようです。一般的な妥協策としてはそれがまず無難であると思います。それと大事なことは、いくら労働者側に辞める自由があるといっても、最低限の引き継ぎをする義務は残っている思います。よく退職日までまったく会社に出てこない社員がいるようですが、それも労働義務を有する雇用契約上どうかなと思われます。

ダンダリンでわかる労働法(4) 内定切り

またもや執筆が遅れました。この時期やはり業務で疲れ切ってゆっくりテレビを見てくつろげるという時間がとれません。と言い訳をしながらビデオで撮っていたダンダリン第4話「内定切りにあう学生たち」を見終わると、これまで法律的な解説をしてきたのですが、うーーん(決して唸っているのではありません。)しばらく何も書けなくなりました。

最後にあれほどの仕打ちをされながらも企業から内定取り消しを取り消され、内定になり企業に採用されることを望んだ学生たち。面接のときにあれだけ熱く自分の夢を語りその企業でそれを実現しようとしていた女子学生が、労働基準監督署に事情を話したことにより、人事部長から将来製品開発部門でその子の夢は果たせないことを冷たく言い放され、失意のもと、精神的にはとてもつらい状況下にあっても就職環境が厳しいこの時代にあって、それでもその企業で働こうと、ばかげた研修を続けて頑張っている姿など・・・・。

 企業の存続をとるか、労働者を守るべきか、企業がつぶれてはそもそも雇用が守れないといった、二律相反的な議論のそのどちらを優先するのか、難しい課題を突きつけられて、それぞれの考え方が相容れないことも、非常に考えさせられる問題でもあります。

ダンダリン、ここにきて深いです。このドラマは今の社会に対してものすごいメッセージを発しています。単純に勧善懲悪で労働基準監督官の活躍を描いているわけではありません。労働基準法のかしこまった解釈や適用だけを世の中に説いているわけでもありません。

この日本の雇用社会がかかえている「アンチテーゼ」を問いかけているのです。

 

今日若者たちが置かれている厳しい状況を日頃就職支援機関等の相談現場で見る中で、よくわかります。

今回は労働契約法労働基準法第104条の監督機関等に対する申告などをした労働者に対して使用者は解雇その他不利益な取扱をしてはならないと規定されているのですが、現実的には労働者の方がその使用者のもとで申告をした後でも働き続けているというのは稀であると言わざるを得ません。

法の下に平等であると規定されていますが、こうした権利を行使する以上労働者は相当な決意や覚悟を要求されるわけです。そして再び職場で働き続けるには精神的にも相当タフでなくてはなりません。

 

こうしたことを今回のダンダリンは視聴者や社会に対してアピールしているのです。このドラマは意外に低調だといわれ、もしかしたら第6回で終了するような噂があるようですが、私はそれは民放といえども勿体ない話だと思います。昨日事情あって裏番組で法律職が登場するドラマを見ましたが、ダンダリンと比べてうーん浅いなという印象を持ちました。それは社労士が登場していないという理由だけではありません。

訴えるメッセージ力が弱いのです。

ダンダリン。第一話はてんこもりで全般的に浅いなという印象がありましたが、ここにきて内容もテーマもグッと深くなりました。悪徳社労士は登場しますが、この番組の持つ問題意識は価値ありと思われます。短期間で終了しないで!と言いたいです。

「ダンダリンでわかる労働法(3)作業主任者の選任と職務とは

作業主任者の選任と職務とは

第3回は、主に労働安全衛生法第14条に定める作業主任者に関する話でしたね。

工事現場で従業員が落下して労災事故をおこしたときに、作業主任者が現場にいなかったため、それを発覚するのを恐れて、救急車等への通報が遅れたということでした。

作業主任者をいかなる場合にどういう資格を有する者を選任すべきかは安全衛生規則第16条で定められており、施行令第6条で作業主任者を選任すべき作業が決められています。ドラマではその第15号か第15号の2であったと思われます。

(落下したときの作業内容が割愛されていてよく確認できませんでした。)

社長さんはその作業主任者たる資格を取得するための技能講習を修了していたのでしょう。

小さな工務店ではそういった資格者は社長とかごく少数の人が持っているにすぎなく、よく兼務する場合もあります。今回はその現場での専任義務があったため労災事故をおこしてしまうと、それが明らかになって今回のように労基署の監督指導を受けてしまうことになりますね。

職場のあんぜんサイト

http://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo34_1.html

 今回は三ヶ月程度の怪我でしたが、労災事故で死亡事故をおこしてしまうとその事故原因や安全対策についての聴取や調査がきつく行われ、建設業などで安全衛生対策を怠っていたとなると公共工事では指名停止になると思ってよいでしょう。

ときに安全パトロールといって公共工事発注担当者、建設事業者等を対象として労働基準監督署の安全衛生課の担当者も随行して、各建設現場などを回っていくことが定期的に行われています。

一種の行事的な要素もありますが、建設業者の安全衛生担当者も参加を義務づけられおり労働災害防止の意識をいっそう促すきっかけにもなっていますね。

労基署の入り口に行くと、今年度の労災事故発生状況などの数字が掲載されていますので、一度ご覧になられてください。

高知県の死亡重大災害発生状況はこちらに載っています。どういう災害がどのように起こったのか載っていますので参考になるのではないでしょう

高知県の労働災害発生状況

http://kochi-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/saigaitoukei_jirei/toukei/rousai.html

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ダンダリンでわかる労働法(2)名ばかり管理職とは

 名ばかり管理職とは

 

 まず、期限待ったなしの業務におわれ第2回の執筆が大変遅れましたことをお詫びします。

さて第2回は社長からたびたびセクハラ行為をされて悩んでいた25歳の女性店長(中華料理店)の事件でした。セクハラつまりセクシャルハラスメントの問題は今日相談事例が多いのですが、被害者からすると労働局(担当は雇用均等室)に訴え出てもなかなか根本的な解決がはかられにくいというのも実情です。

ドラマでは労働局の指導を受けて社長が本人に謝罪をしたというカタチでの結果にはなっていますが、その後にセクハラからパワハラ(上司等の権限をかさにした嫌がらせ・いじめ・圧迫)に変容するケースは少なくはありません。

さらにセクハラ行為をされたと立証するのは実は非常に困難で、裁判所等第三者に客観的に認めてもらうにはそれ相当の証拠資料などを提出する必要があるため、特にそれが密室的な場所で行われていたとするなら、第三者の証言も得られにくいケースは出てこようかと思います。

ドラマでは、たまたま社長の言動を食事にきていて居合わせた労働基準監督官が聞いて直接社長に確認したような事例は通常ではありえないことでしょう。(笑い)

 

さて、今回のテーマはセクハラもさることながら「名ばかり管理職」の残業代未払い問題でした。

労働基準法第41条第2号に定める「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」の解釈が焦点でした。

これは東京地裁で、ファーストフード店の店長について上記にあたらないという判決が行われました。それ以降労基署の調査においても、名目上の管理職、つまり上記で言う「監督若しくは管理の地位にある者」とはそれ相当の人事権や経営に関しても権限を有するような、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者とー体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきとされて判断基準となっています。

今回のように入社してそう何年も経たず働きぶりがいいとして「店長」に抜擢されたが、シフト勤務や人員の割り振りすら権限を与えられなかった、25歳の女性店長は、それに当たらないと否定されたわけです。

ですので過去2年間分の残業代未払い分の支払を監督署は企業に命じました。

ただ「名ばかり管理職」の問題はたんに未払い残業代だけが問われるのではなくて、最大の問題点は「管理職だから」という論理で強要される長時間労働を常に強いられることにより、労働者に心身の健康を害するリスクがあるという点に注目しなければなりません。 

東京地裁の判決の事件では、その店長の時間外労働は月100時間を超えていたなど、長時間労働が恒常的になっていたという事実です。その原告も脳疾患の病気になったと診断され、この事案でも割増賃金の未払い問題ではなく、労働者の健康管理が問題視されていた、つまり企業が労働者への安全配慮義務を怠っていたという問題でもあると

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いえます。

「ダンダリンでわかる労働法(1)」男女雇用機会均等・安全規則・パワハラetc

10月2日から始まりました、テレビドラマ「ダンダリン労働基準監督官」を視聴してその中から見つけたポイントをもとに労働法のことなどを解説してみたいと思います。

http://www.ntv.co.jp/dandarin/index.html

まず、冒頭の段田凛が出勤途中でみかけた喫茶店の店員さんの募集ビラ「ウェイトレスさん大募集!若くてかわいい女の子求む」

今頃こんな例は無いとは思いますが、番組の用語解説にあるように男女雇用機会均等法第5条の規定、つまり労働者の募集、採用について、性別に差をもうけてはいけないということですね。

年齢についても雇用対策法第10条で年齢にかかわりない均等な機会を与えることが義務づけられています。ハローワーク求人などでは事前にこうした点はチェックされていますが、独自に募集するときなどはその表現に注意する必要があります。

 

次に通勤途上で見かけた工事現場の足場で、高さがある足場で手すりを設置していなかった事例ですが、一定の高さ以上のときは手すりを設置することが、労働安全規則というもので義務づけられています。このほかにも労働災害防止のための防止措置や安全点検等のチェック義務などが課せられています。

労働安全衛生法は非常にボリュームがある法規で社労士でもこの分野全てに詳しい方は相当稀だと思われます。労働基準監督署内にいる職員だってしかり。労基署(略称)に

は労働基準監督官とは別に、このプロである安全衛生専門官などが安全衛生課などに配置されて事業場や工事現場に出向き作業安全などの監督指導などを行っています。また労災保険に関する業務を行っている労災課も同じ署内に配置されていますね。

 

過重労働、サービス残業で苦しまれている労働者の方が登場していましたが、近年こうした悪質な例も正直言うと結構多いと言わざるを得ません。労働基準法での取締対象としては残業代の未払いについての法違反を究明し、行政指導や是正監督などを行いますが、それに従わない企業で悪質なケースは、ドラマでも警察署や検察庁の協力を得て労働基準法102条にある監督官の持つ法違反について刑事訴訟法に規定する司法警察官としての職務を行使する場合があります。とはいっても頻繁にあるわけではなく、単位署でも年に1件、2件あるかないかというレベルではないでしょうか。

 

労基法第101条の労働基準監督官は事業場をいつでも臨検調査を行い、使用者や労働者に対し尋問できる権限があることは知っておくといいでしょう。

監督官に対してそのことを知らなくて横柄な態度を取ったり、面倒くさそうな対応をしていますと、監督官も私たちと同様感情を持っていますから、不信感を抱かれたり、余計に意地になってトコトン追求される(段田凛のように正義感むき出しという人はそれほどは多くないとは思いますが。)こともないわけではありません。

現実的には事前に連絡がある場合といきなり来る場合とあります。

後者の方がその前に労基署に労働者や関係者から、なんらかの訴えや申告があって来るケースは多いと思われます。

今回のポイントとしてはこんなところでしょうか。まだ幾つかあったと思いますが、また次回の折に。

 

ひとが元気になる明るい職場づくりをサポートしています。

よさこい労務事務所 竹内隆志