働くひととホワイト企業を応援!志ンガー社労士の竹内隆志が音楽と講話で労働法を解説します

ホワイトな志ンガーズの世話人社会保険労務士竹内隆志が歌と講話で楽しく労働法について連載しています。

ダンダリンでわかる労働法(6)外国人技能実習生制度と最低賃金

今回は外国人技能実習生が最低賃金額の半分にも満たない低賃金で働かされ、残業代も支払われず、外出もままならないほど不当に拘束されていた内容でした。あまりにも酷いタコ部屋のような労働環境の事例でしょうか。今日ではありえないと思えるような設定でしたが。(^^)

 

外国人技能実習生制度とは、開発途上国等の青年・壮年を一定期間受け入れ、わが国で開発され培われた産業上の技能・技術・知識の習得をしてもらい、母国の経済・産業振興を担う「人づくり」を目的としたものです。この制度は日本の国際協力・国際貢献において重要な役割を担っています。

各国の経済発展を担う「人づくり」に一層貢献するとことを目的とした制度への拡充の観点から日本政府は1993年、所定の要件を満たした研修生に雇用関係の下でより実践的な技術等を習熟させる技能実習制度を創設しました。

これまでこの制度は日本の社会に定着し、研修生としての新規入国者数が10万人を超え、研修から技能実習への移行者数も6万人を超えるようになったのですが、このドラマに出てきたように、本来の制度の趣旨を十分に理解せずに、外国人の方を単に低賃金労働者として不適正な取り扱いをする受け入れ団体・受け入れ企業がみられるようになったことも事実です。

ドラマの中で出てきたように、技能実習生などに劣悪な労働環境を強いて休日労働や時間外労働をさせてその休日労働や時間外労働の賃金を支払わないといった事例などですね。

このため2009年7月に「入管法」の改正が行われ、これまでの研修・技能実習生制度を廃止して、新たな技能実習制度を創設し、講習終了後すぐに労働関係法令を適用できるようにして、技能実習生の保護を図るようになりました。この新制度は2010年7月から施行されています。

具体的に言うとこれまで入管法では「研修」と「特定活動(技能実習)」を含めた在留資格として新たに「技能実習」を創設し、技能実習生の法的地位の安定をはかるとともに、雇用契約に基づく技能等の修得活動などを義務付け、入国1年目から技能実習生労働基準法最低賃金法等が適用され保護の充実が図られるようになりました。

 

入管法の改正に伴い、2010年7月1日以降に技能実習生を受け入れる監理団体は、講習期間中に専門的知識を有する外部講師による「技能実習生の法的保護に必要な情報」に係る講義を行うことが義務づけられました。

私もJITCOの登録講師として時々技能実習生を受け入れる管理団体から依頼されて、入管法令及び労働関係法令の講義を外国人技能実習生の方々に行っています。

その中で実習生の関心の高い項目としては賃金なかでも最低賃金に関しての情報に深い関心を持たれていることを実感します。日本に来ていろんなトラブルにあったときの相談先や相談機関などの情報にも実習生の皆さんは強い関心を持って聞かれています。

 

今回のドラマで平成25年10月現在東京都の最低賃金869円の半分にも満たない400円で働かされていた事実が発覚するのですが、それでも母国の経済水準と比較しても10倍ほど高いマネーが日本で働くことで得られるため、お金を貯めて母国で暮らす家族の元へ送るため必死で働いていた外国人の方の姿が描かれていました。

私も先日中国人の女性の技能実習生に講義をさせていただきましたが、母国に子供を残してまで彼女らは日本で働きに来られているのをみると、我々日本人は恵まれていることを感じたりもします。でも実習生の皆さんは明るい笑顔で熱心に日本語などを習得しようとする姿をみるとこちらも逆に元気づけられますね。

 

最低賃金は、毎年改定されており、地域別最低賃金と一定の事業や職業に従事する期間労働者及びス容赦に適用され特定(産業別)最低賃金を除いては各都道府県毎に10月下旬ころに新しい最低賃金額の告示がなされています。障害者等の方でこの最低賃金額から一定率減額した額をもって適用すされる減額の特例が認められることがあります。この場合は管轄の労働基準監督署長に最低賃金の減額の特例許可申請書を提出し、許可を受ける必要があります。

 

実務で多い事例としては、最低賃金額と比較するときに対象賃金の計算方法があります。月給制の場合の換算方法として、月給額の12か月分をまず出します。

次に年間所定労働日数をきちんと集計します。所定労働日数とは年間の暦の日数から会社の所定休日などを除いた日数のことです。

その年間所定労働日数に1日当たりの労働時間数、例えば1日8時間とすれば、年間所定労働日数に8時間をかけたものが「年間総所定労働時間数」になります。

先の「月給額の12か月分」を「年間総所定労働時間数」で割ったものが換算した時間額となります。これを各都道府県で告示されている最低賃金額(時間額)と比較して超えていればOKとなります。

 

この対象となる月給額には、臨時に支払われる賃金(結婚手当)や賞与あるいは時間外割増賃金、休日労働の割増賃金、深夜労働の割増賃金、そして精皆勤手当、通勤手当及び家族手当などの賃金は除かれますのでご注意ください。実務では間違って参入して計算しているケースは結構あります。

最低賃金に違反し、労働者が是正のための申告をしたことにより不利益な扱いをした場合には、もちろん懲役や罰金などの処罰の対象となります。

最低賃金違反の疑いがあるときなどには労働基準監督官が臨検を行える権限があります。